Flowe of life -Life is ART-

旅する絵描きの日々と想い。

【雪山登山】死と隣り合わせのワイナポトシ6088m

 


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5800m地点まで来た。


登頂までは、残り288mだ。


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身体が言う事を聞かなくなり、足がもつれる。


左、右、左、右と当たり前に動かせない。

 


バランスも保てず、ふらつく。

 


右は、断崖絶壁の雪斜面。


運良く左に倒れ込む。

 


ガイドのラミーロは『降りるぞ』と言った。

 

 

 


私は首を横に、強く何度も振り続けた。

 

 

『いやだ!!!絶対に登頂する!!!』

その気持ちだけで胸が一杯だった。

 


自然と涙が溢れた。
悔しい。
心は全く諦めて無かった。


前向きな気持ちで、精神的にも安定していた。
なのに、身体が言う事をきかないのだ。
まるで、自分の身体じゃないみたいだった。
まだ動けるはずなのに。
歩けるはずなのに。

 

 

悔しくて悔しくて、泣けた。
でも、それでも無理だと思わなかった。

 

 

散々、降りるぞと言われ、嫌だと言い、それを繰り返し数分。
ラミーロは諦め顔で、しかし、笑顔で、動き出した。

 

 


『行くぞ』

 

 



嬉しくて嬉しくて、無理矢理にまた足を動かした。
すると、さっきよりも動けた。

 


まだ、歩ける。

 


心を落ち着かせ、自己暗示を強めた。


『大丈夫。まだ歩ける。登頂するんだ。』

 

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ラミーロは、スパルタガイドだった。

 

 
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休憩も、こちらの様子を伺う様子も少なく
最初は不安になった。

 

 

しかし、私の調子が悪くなってからは、少しずつ休憩を増やしてくれた。
そして、抱き締めてこう言った。

 


『ゆっくり、ゆっくり行こう。』

 

 


彼の隠れ持つ優しさに、私は涙した。

 


しかし、冗談混じりで休憩毎に
『降りるか?笑』
と何度も聞いてくる。

 


その度に私はNO!!と言い、それを見て彼は何度も笑っていた。
完全に面白がっていたのだが、そこに愛を感じた。


ありがとう、ラミーロ。

 

 

『今、5930mだ』

 


『今、6000mだ』

 


少しずつ、頂上に近付く。
急な雪の斜面。
転げ落ちない様に、足に神経を集中させて、歩く。

 


周りを見渡す余裕は無く、必死に自分の足元だけを見て歩いた。

 


ラミーロと私に繋がれた、“命綱”がピンと張らないよう、彼に着いていく。
ピンと張っても、彼はそれを引っ張り、私に歩け!進め!と無言で伝えるのだ。

 


歩くしかない。進むしかない。

だって、登頂したいから。

自分で決めたから。

 

 

右耳から聞こえてくる、好きなアーティストの歌声に勇気を貰う。

 

 

寒くてバッテリーの減りが速い。

 

 

登山で聞く音楽の大切さを強く感じた。

ローテンションな曲は、時に元気を奪う。

 

それ程影響を与える音楽の力は、人生でうまく使い分けるべきだと思う。

 


見えないけれど、確実にパワーを持っているもの。
そこには、歌い手のエネルギーもあって、それが自分のエネルギーにもなるんだと思う。

 

 様々な助けが力を合わせて、

そして、、、

 

 2018年の6月20日

 

ー私はワイナポトシに登頂する事ができたー

 

 
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この時の感情は、もう、ただただ嬉しかった。

嬉しくて嬉しくて、涙が止めどなく溢れた。

声をあげて泣いた。わんわん泣いてるのは、私一人だった。

 

景色が美しくて、今まで味わった事のない喜びで満たされて、

何度も「綺麗、、、」とつぶやいていた。

 

 

 

疲れなんて、一瞬で忘れられた。

 

 

 

 

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持ってきた1リットルの水とアクエリアスは、氷になってしまい、飲めない状態。

 


標高が高く、酸素が薄く、息をするのがやっとの状態だ。
唾を飲むタイミングさえ、間違うと、呼吸が苦しくなる。

 


口を開けっ放しで、冷気を吸い続けた為、気管支をやられた。喉から血の味がする。

 


下山時は、両足の親指が非常に痛かった。

ハイキャンプに到着後、靴を脱ぐと、そこには水色に変色した爪が、腫れ上がって指になんとかくっついていた。

 
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(爪ははがれた。半年程で生え変わり、元に戻るらしい。膿んでたり、痛い場合は病院へ行く事をお勧めする。)

 

 


これから、ベースキャンプまで15キロの荷物を担いで、更に下山しなければならなかった。

 


通常1時間半も掛からない下山道を、3時間程かけて降りた。

 


危ない所だけ、ラミーロが荷物を持ってくれた。
肩も貸してくれた。

「大丈夫!」と言う私の先を早々と下り進んでは立ち止まり、

岩に座って私を待ってくれていた。。


どうしても、自分で荷物を持って、自分の足で降りたかった。

 


下山も含めて、登山だと思うから。

 

 


登山時とは違って見える、下山中の景色。それを見て色々考える事が、楽しい。


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同じ景色なのに、達成感と満足感で、何とも言えない感情になる。

 


靴擦れも、打撲も、死んだ爪の痛さも、

私の足の動きは遅らせたけれど、心には何の影響も無かった。

 


何も、「辛い」とか「苦しい」とか感じなかった。
思考は無に近いのに、そこには「喜び」と「感謝」しかなかった。

 

 

あたしは、やっぱり、神様はいると思う。

何度も祈ってきた。
何度も助けられた。

 

 ご先祖様であったり、家族であったり、友達であったり、見守ってくれている人達が、私の神様。

 


いつも、ついてる。
だから、大丈夫。
何かあっても、助かる。

きっと、上手くいく。

 

 

いつも、そう信じてる。

 



今回もそう。

天気や、仲間やガイドにも恵まれ、前日まで悪かった体調も不思議と良くなり、運が良かったとしか思えない。


通常、一人のガイドに対して二人の登山者が命綱を繋がれ、アタックする事が多い。
しかし、私は単独でガイドを独占できた。


もし、ペアがいたら、私のペースに巻き込んで迷惑をかけていたかもしれない。

または、ペアがリタイアを希望して、私も道連れで降りる事になっていたかもしれない。(そう言う決まりもある)

 


登頂率は、約50%らしい。

(女性だとさらに落ちるとかなんとか。20~30%と言う方も)

 


ラパスの街に戻り「登ってきたよ!」とツアーのスタッフに報告すると、

「頂上は行ってないでしょ?」と言われた。


「え、頂上行ったよ!」と言ったら非常にビックリされた。

 

 


「おめでとう」の言葉が嬉しかった。

 


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標高4700mのベースキャンプに一泊。
5200mのハイキャンプで、6時間の仮眠。
その後、6088mのワイナポトシにアタック。

 

拠点となるラパスの街3700mでさえ、坂を登ると息が切れる程空気が薄く感じる。

 

 

嘘みたいな、本当の話。
夢のような、リアルな経験。

 


終わった今、現実味は無いけれど、

足の痛みが、それを夢じゃなかったと教えてくれている気がする。

 

 

「また登りたい」

 

 

今の正直な気持ちだ。

 


下山時は、もう登ることはないだろうな、と思っていたのに、後々湧いた感情は、不思議と再チャレンジだった。

 

 

他の雪山にも登りたいし、もっと高い山にもチャレンジしたい。

 

 

精神力はさらに鍛えられ、また少しだけ、自信に繋がった。

 

 

 


しかし、これから先、何があるかわからない。

精神力ではカバーし切れない程、体力が必要な場面にも遭遇するだろう。

 


それはいつか、誰かを守る時に必要になるかもしれない。


今回の、関西の地震や、豪雨災害の様に。

 


火事場の馬鹿力。
今回はまさに、それで登った感覚。

 


家族や友達に、登頂した!と言う報告がしたかった。

達成出来なかったら出来なかったで、そこから学ぶものも沢山あっただろう。

 


達成出来ない程のチャレンジをもっとしていきたいし、そこで学んだ事をどんどん生かして成長したい。

 

 

まだまだ、発展途上人間。

 


もっと、多くの経験をしたい。
もっと、多くの感情に出逢いたい。

 

 

だから、私はまだ、旅を続ける。
そしてまた、何かに挑戦するだろう。

 


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様々な事物が人生に例えられるが、

登山もまた、まるで人生の縮図の様だと思った。

 

 

目的地が定まれば、ひたすら歩くのみ。
頑張り過ぎて無理をして、速ければ良いわけではないし、怠けて余裕ぶっていても、いけない。

 


しっかり自分のペースと、体力を知ること。

 


無理せず、歩き続けられる速さで歩く事。
無理をしたらいつか、パンクする。
そして何より、自分を信じる事が大切だ。

 

 

目的地が定まっていなければ、そこに向かって歩き出す事も不可能だ。どこを歩いているのか、どこを歩けばいいのか、分からなくなるだろう。

 

今回の目的地は、ワイナポトシの頂上。
それは、みんな同じだった。

 


ウサギとカメの童話じゃないけど、見るべきものはゴールなのだ。周りの人ではない。
誰かが速いから、同じように速くいかなきゃ。とか、誰かが遅いから、自分もゆっくりでいいや。とかではない。

 

 

自分の、夢や目標、達成したい事の為に

ゴールを見つめ、進む。

 


情報を得て賢く動く事も必要だし、体力をつけたり、体調管理も必要。

 

 

そして、挑むのだ。

 

 

 

準備に時間や力をかけすぎて、本番に挑めない間に死んだり、モチベーションが下がるのは避けたい。

 

 

何事も、熱量があるうちに、行動を起こすべきだ。

行動の原動力は、その「想い」だから。

 

自分を信じる事は、運を引き寄せる。

 

 

やはり登山は、人生そのものに感じた。
今回、自分の人生をしっかり生きようと、改めて感じさせて貰った。

 

 

自分のペースで。
着実に前に進む。
目標を持って。

 

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今回、ベースキャンプとハイキャンプが一緒だった、

イスラエル人と、ドイツ人カップル。


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イスラエルから来た彼らは元々、頂上まで行くつもりは無かった。

しかし、話をする中で乗り気になって、一緒にチャレンジする事になったのだ。

 


時に励まし合い、喜びや苦しみを共有できた仲間がいた事はとても有難かった。

 

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登山中、ガイドのラミーロには、何度も怒られた。


それほど、この登山は、命の危険も隣り合わせだと言うことだ。


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(下山中。恐ろしい程深い溝がいくつもあった)

 

 

ワイナポトシの登山シーズンは、6-8月がベストとされている。

 


観光地のベストシーズンとかあまり気にしないタイプなのだが、こればっかりはシーズンに左右されると思うので、大切だと思う。

 


コカ茶をしっかり飲んだのも良かった。

そして、今回は全員ベジタリアン食を三日間用意して貰っていたのだが、それも登山向きらしい。

 

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普通、気持ち悪くなったり、頭痛がする人が多い様だが私は一切調子が悪くならず、用意していた薬も飲まなかった。

 

おそらく、犬に嚙まれた時に標高4000mの街ポトシで一週間過ごし、高地順応がしっかり出来ていたから。

 

そう思うと犬に嚙まれた事も必然で、ラッキーだったとしか思えない。

 

 
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今回、私が登った事により、登頂したい人にアドバイス出来ることがあるとしたら。

 

・ベストシーズン、天候は大事。


・登山靴は、履きなれた物のほうが良い。レンタルするなら大きめを。


・下山前は再度、靴の紐をしっかり足首に締め直して。


・グミもガムも噛めるのは始めだけでした。


・ペットボトルの水は凍るから、水筒であったかいコカ茶がベストかも。


・登山前5日〜1週間は身体を高地順応させる為に、ラパスかポトシで過ごして。


・ご飯は腹八分目で、食べ無いのはダメ。


・常にあったかいコカ茶を適度に飲んで。


・出来たらベジタリアン食。


・睡眠はしっかりとる。登頂前夜は、18時頃に就寝して、0時に起きて登らないといけないから、その時間に寝れる身体にしておくといいかも。


・ベースキャンプからハイキャンプまでは2時間くらい、昼間に登るはずなので、薄着で大丈夫。靴下一枚、下はインナーともう一枚、上半身はTシャツと上着で十分かと。天気にもよるけど。


・ハイキャンプから頂上までは、靴下2枚、下はヒートテック、ゆるめのパンツ、防水のジャージ、上はヒートテック、Tシャツ、フリース、ダウン、防水ジャケット、あと、ネックウォーマー、顔を覆うマスク、ヘルメット、手袋二枚重ね、それでも寒かった。始めの方は動くと暑いし脱ぎたいってなるけど、上の方は極寒やし、少しずつしか動かなくなるから、まじで寒い。(あくまで私の感覚。6月末)


・カメラ持って行ってたけど、寒さで充電が無くなってた。ギリギリ数枚とれたけど、レンズも凍ってて上手く映らなかった。ので持っていく時は対策必要。落とさない様にも。


・音楽大切。音楽好きな人は、好きな曲を入れたipodなりを持っていくと良い。バッテリー減るの速い。


・ツアー会社は私はinca land tourさんにお願いし、レンタル色々込で、2泊3日900ボリでした。
私は登山用品持ってなかったので、レンタルに関して融通きかしてくれたのと、スタッフさんのフレンドリーさが好印象で、ここに決めた。ガイドは運だから、ガイドで決めたい人はネットで調べて連絡を。


・必要だと思う人は、薬とか酸素ボンベ持っていくと良いかと。


・高所恐怖症でも、登れました。


・喘息持ちで、過呼吸もたまになるタイプですが、気管支が傷ついた位で済んだ。出来たら鼻で吸って口で吐いてって息した方がいいけど、鼻水とまらないから厳しい。


・女性は、ノーブラ登山をすすめます。ストレスフリー大切。


・念の為おむつ履いてたけど、寒い割に尿意がなく、下山まで間に合いました。私はね!笑


・鼻水ふくティッシュがあると良い。


・貴重品は信頼できる宿の金庫に預けても良かったかも。


・国立公園入園料20ぼり必要。


・ペアいないほうがいい人は単独依頼した方が。割高なるけど。私のように依頼せずともペアがいないラッキーな場合も。


・下山中のお菓子が美味いetc...

 

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夜中の1時過ぎに登り始めて、6時半くらいに登頂。

 


5時間20分。
朝日が登ったのは7時頃だった。
朝日が登る前に登頂しなければ、太陽の熱により、雪が溶けてしまい危険なので、登らせて貰えなくなる。


ガイドのハイペースにも意味があった。


当たり前だが、命の危機と隣合わせで働いているのだ。


仕事とは言え、登山初心者などを連れてあの山に何度も登っているガイドのすごさを改めて感じた。

 


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 (ガイドのラミーロ。本当にありがとう。今回は爪負傷の為、一緒に飲みに行かなかったので、次回は思いっきりご馳走する予定。)

 

 

 

一生忘れられない経験になった。

一生忘れたくない経験になった。

 

 

頂上は、今まで見たどんな景色よりも美しく見えた。

 

 

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雪山登山を経験して感じた事を、翌日感じたまま文章に綴りました。

長いですが、あえて添削せずにそのままの形で残します。

これが、私の感じたありのまま。

 

長い文章を読んでくださった方、ありがとうございます。

いつか誰かの参考になれば、幸いです。